2025-01-17

マチルデのマンスリーマンション周辺でランチのお店を探す。煙の良い匂いにつられて入った燻製料理屋が大当たりで、マチルデは大喜びでほっけの開きを完食。原宿に行く用事があるという彼女と一旦解散し、薬局と百均で買い物をしてから部屋に戻り、“羽田空港直通便”のタクシーを5時半に来てもらうように予約する。マチルデから「誤ってDaisoに入店してしまったので、ユキが出発する時間までに部屋戻れないと思う」とメッセージが来て笑った。まあ、またオランダで会える。マチルデはDaisoが楽しすぎるらしく、島根のDaisoでも2時間くらい費やしていた。

マチルデの部屋に送っておいてもらった小林さんの大きな黒いスーツケースと、自分の荷物が入った大きな白いスーツケース、それとバックパックを持って外に出る。約束通りの場所に停まっていたタクシーに荷物を積み込んで、羽田空港へ。今から私はモロッコに行くことになっている。

温泉津に滞在していた2ヶ月間のうちの後半1ヶ月間、私はなぜか、小林さんがモロッコのアートフェアに出す作品の制作をしていた。私は自分の制作を進めるために温泉津にミシンを持って行き、小林さんはその時ちょうど作品を縫ってくれる人間を探していた。奇跡的なタイミングでミシンと共に現れた私は、小林さんの作品”空き家から出てきた着物で作った巨大Tシャツ”の制作チームに加わることになり、結果的にその制作のほとんどを担うことになった。ユニクロのTシャツを解体して型を取り、それを拡大して全長2.5mのTシャツのパターンを制作。空き家から見つかった着物を解体して一度布地に戻し、それを巨大Tシャツの形に縫い合わせていく。作っているうちに、裏地の処理とか、柄合わせとかにまでこだわり始めてしまって、想像していたより遥かに大変な作業になった。温泉津を離れる日の朝も早起きしてTシャツの襟ぐりを縫っていたくらい、ギリギリまで制作した。そのくらい頑張ったので、私は小林さんにモロッコまで一緒に連れて行ってもらえることになった。ついでにそのままオランダとパリにもついて行かせてもらえる。驚きの展開すぎて未だに現実味がない。

羽田空港に到着し、出発ロビーでターキッシュエアラインズのカウンターを探す。行列だったけど、アプリでオンラインチェックインをしている人用の早いレーンに並ばせてもらえたので、結構スムーズにチェックインが完了した。カウンターででかいスーツケース2個を預けてだいぶ身軽になり、とりあえずトイレへ。海外に行くのは5年ぶり。有効期限がわずかだったからパスポートも更新して新しくした。無事にチェックインできてほっとしながらトイレの棚にバックパックを置いた時、何かが落ちた音がした。下を見ると便器の中に私のスマホが水没している。反射的なすばやさで便器からスマホを取り出し、カバーを外して、トイレットペーパーでできる限り拭いた。今スマホを失ったらやばすぎる。アプリでオンラインチェックインしたから、飛行機のチケットもスマホの中にある。プチパニック

ターキッシュエアラインズのカウンターに戻り、行列を整理している職員のお姉さんに話しかけた。スマホで搭乗券を表示しながら今の状況を説明する。手に持っているスマホがだんだん熱を帯びてきている気がする。お姉さんが私のパスポートを持ってカウンターに手続きしに行ってくれている間、小林さんに「スマホが水没したので連絡取れなくなるかもしれません。モロッコでお会いしましょう」とメッセージを送り、スマホの電源を切った。おかげさまで紙の搭乗券を手に入れて、保安検査場を通過し、何事もなかったかのように搭乗ゲートに向かう。オンラインチェックインの場合でも、万が一に備えて紙のチケットも出してもらうようにした方が良いです。

飛行機は21:45発の予定だけど、整備不良で遅延しているらしい。出発予定時刻を過ぎてしばらくしてからも搭乗ゲートの近くで待っていたけど、遂には“出発時刻未定”になってしまい、さすがに暇だったのでちょっとロビーを歩き回ってみることに。NHK WORLDが流れている大きなモニターがあり、そこで能登震災についてのニュース番組がやっていた。不思議な気持ち。私は今からモロッコに行く。モニターの前に置いてあった深く沈みこむソファに座り、英語で説明される能登の現状をしばらく観ていたけど、被災者のインタビュー映像に涙が出てきてしまったのでモニターを離れて搭乗ゲートに戻った。

搭乗ゲートは混雑していた。待ちくたびれてイライラした乗客が職員さんに文句を言い続けている。少し離れた所にあるベンチで横になって本を読んでいたらだんだん眠くなってきて、半分寝ていたら、他の乗客達が団体になってどこかに歩き出していることに気づいた。何?焦って職員さんに聞きにいくと、今日はもう飛行機飛ばないらしい。まじか。確かにもう2時だし、そうか、欠航とかあるのか。「ホテル代とタクシー代は補填されますので、本日はご自宅に戻るか、どこかホテルをとっていただいて、また明日の出発時刻が決まり次第HPにてお知らせいたします」とのことで、午前3時、日本に入国。ベルトコンベアに流れてきたでかいスーツケース2個を回収し、到着ロビーに向かおうとしたところで職員の人がターキッシュエアラインズの欠航証明書を配りながら現時点では振替便は明日の17:00になりそうだと教えてくれた。

空港のロビーに出て、恐る恐るスマホの電源を入れる。点いた。助かった~。グーグルマップで近くのホテルを検索し、適当に電話を掛けていくが「申し訳ございません。本日は満室いただいております。」と言われてしまうことが多く、ホテルってこんなに満室なものなのかとびっくり。空港の近くは無理そうだったので少し範囲を広げて探し、ようやく空きがあった蒲田のビジネスホテルを予約した。でかいスーツケース2個と共にタクシーに乗って蒲田のホテルへ。多分さっき電話で対応してくれた、深夜なのにやたら愛想の良いおじさまホテルマンが受付に立っていた。「こちらでお願いします」と案内された受付の手前にある機械のタッチパネルを操作してホテル代を支払う。財布の中のクレジットカードを探しながら、さっき空港内で「モロッコ行くのに現金足りないかも」と不安になってATMで深夜料金の手数料を払ってお金をおろしたことを思い出して悔しくなった。